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Upsala-Ekeby 3

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1886年、Upsala-Ekeby AB(ウプサラ・エーケビー)は、スウェーデンの古都ウプサラ西部郊外に創業しました。初期、埋蔵された粘土によるタイル・レンガ生産から始まり、1900年に入ると、展示会に出品した「タイルストーブ」が注目を集め、次第に家庭用ストーブの耐熱タイル生産で業務を拡大。近隣の同業他社の買収を進め、一時はスカンジナビア最大のレンガ・タイルメーカーにまで成長しました。 ところで「タイルストーブ」といっても今や馴染みは薄く、北欧の古いレジデンスを訪ねると、部屋の片隅に、使われず鎮座した円筒状の炉を見かけることがある程度です。 一般的な暖炉の類は、煙突から立ち上る煙とともに熱量が8割方放出されてしまうのに対し、「タイルストーブ」は燃焼室の上に煙道を複雑に巡らす構造によって、室内を効率よく暖め、木材燃料が不足ぎみの北欧では格好の熱源となりました。 スウェーデンでは「kakelugn(カークルン)」と呼ばれ、発祥は6世紀イタリア。「鍋」を意味するラテン語caucellusを語源とし、14世紀バルト海沿岸に広がるハンザ同盟諸都市を介しスウェーデンに伝播。その後、国内での国を挙げての改良と、都市化の流れに呼応するようにして貴族の邸宅から一般家庭へと普及していきました。1727年創業の製陶所ロールストランドも当時重要な役割を担ったといいます。 第一次世界大戦終結後の1920年頃からは、スウェーデン国内でも各都市を基盤とした住宅ブームや建設ラッシュが進み、同時に「タイルストーブ」もセントラルヒーティングにその座を譲ることになるのですが、それまでのストーブ製造に当てられた時間と技術は、北欧陶磁器文化の土壌となったと言っても過言ではありません。 Den sevenska kakelugnen |1700-talets tillverkning från Marieberg till Rörstrand