陶芸・グラスアート作家 シグネ・ペーション・メリン
スウェーデン“心の故郷”と呼ばれるスコーネ地方。スウェーデン南端にあり、隣国デンマークの文化・伝統も身近にして独特の風景を映しだしています。シグネ・ペーション・メリン(Signe Persson-Melin1925〜)は、このエリアの中心都市マルメ(Malmö)を拠点に、スウェーデンとデンマーク、両国の手工芸の伝統文化を吸収しながら北欧モダニズムへと昇華させた類まれな陶芸・グラスアート作家といえます。
シグネは、10代の頃からすでに陶芸をこころざし、高校を中退してマルメ近郊の鉢物工場で働きました。それがこの世界への第一歩となりました。1944年にストックホルムのKONSTFACK(現在の国立芸術工芸デザイン大学)に入学。戦争終結とともに、1945年コペンハーゲン芸術工芸学校に転籍し陶芸とガラスデザインを学びました。1947年夏にはデンマークの名窯SAXBOにて設立者ナタリー・クレブス(1Natharie Krebs895-1978)に師事。ここで、陶芸家が自らの工房で働く意味を理解したといいます。
また、その頃イギリスへ旅行しバーナード・リーチ工房を訪ね、韓国、日本の手工芸(民藝)の世界にインスパイアされました。また、ルーシー・リーの世界にも触れ、単調なストロークをベースとした洗練されたデザインや、テクスチャを活かす釉薬の活用法に新しい境地を見出したといいます。
1951年マルメに自身のスタジオを持ち、1953年ストックホルムGalerie Moderneにてデビュー展を開催。その後多くの展示会に意欲作を出品し、1955年、スウェーデン手工芸協会主催のH55展(Hälsingborgsutställningen1955)にて錫釉薬の陶器とコルクを組み合わせたスパイスポットを出展、その機能美あふれる造形で一躍有名となりました。1958年には、北欧のデザイナーを対象とする最も権威のあるルニング賞を受賞。
以来、BODA(ボダ)、BODANOVA (ボダノヴァ)、RORSTRAND(RORSTRAND)、DESIGN HOUSE STOCKHOLM(デザインハウスストックホルム)、HOGANAS KERAMIK(ホガナスケラミック)、SVENSKT TENN(スヴェンスク・テン)、GUSTAVSBERG(グスタフスベリ)で作品を発表しています。
1985年にはストックホルムの国立芸術工芸デザイン大学ガラスセラミックデザイン部門の教授に就任。1990年に退官し、2000年以降、再び地元マルメにスタジオを構え創作活動にあたっています。