永遠のグラスアートブランド「ヌータヤルヴィ」



フィンランド最古のガラス工場、ヌータヤルヴィ。


ヘルシンキからおよそ150km北西。広大な森林をかかえたヌータヤルヴィ村に、1793年、ガラス工場ヌータヤルヴィ社(Nuutajärvi)が設立されました。当時、高まりつつあったガラスの需要に応えて、窯業に必要な森林資源の豊富なこの村が選ばれたのです。


 

ヌータヤルヴィの世界を確立したカイ・フランク。


創業以来、様々な実績とガラス窯業の伝統を重ねてきたヌータヤルヴィ社でしたが、1947年の火災により甚大な被害を受け、アラビア製陶所(ARABIA)を傘下に持つヴァルッツィラ(Wärtsila)グループに買収されました。それとともにアラビア製陶所で活躍していたデザイナー、カイ・フランク(Kaj Franck1911-1989)がアートディレクターとして参画。戦後は、彼のリーダーシップの元、フィンランド有数のアートガラスメーカーへと成長していきました

 


ヌータヤルヴィの森で生まれたオイヴァ・トイッカの[バード]。


ヌータヤルヴィ社には、カイ・フランクに続くように様々な作家が加わりました。例えば1952年にはサーラ・ホペア(Saara Hopea 1925-1984)が、カイ・フランクのアシスタントとして採用されました。サーラがデザインした積み重ね型[タンブラー1718]、カイ・フランクのプレスガラス製[タンブラー5023][タンブラー2744]は、戦後の美しい日用品のシンボルとなりました。

1963年、オイヴァ・トイッカOiva Toikka 1931-2019がデザイナーとして参画。次々と個性豊かな作品を発表し、ヌータヤルヴィの森と湖水を背景して、1972年[バード]が誕生しました。

その他にも、グンネル・ナイマン(Gunnel Nyman1909-1948)、ヘイッキ・オルヴォラ(Heikki Orvola1943-)、ケルットゥ・ヌルミネン(Kerttu Nurminen1943- )などのデザイナーがヌータヤルヴィ社で活躍しました。


 

ヌータヤルヴィ・グラス・ヴィレッジ。


1970年代、ヌータヤルヴィ村は、Nuutajärvi Glass Villageという名称となり、観光事業も進められました。その一画にはNuutajärvi Glass Museumがカイ・フランク主導のもと開設。ヌータヤルヴィ社で制作されてきたコレクションが収蔵されています。

1973年後期、全世界を覆ったオイルショックと輸出入環境の大きな変化は、北欧ガラス産業への打撃となりました。1988年、ヌータヤルヴィ社はイッタラ社と合併。現在は、FISKARSグルーブによりイッタラブランドとして展開されています。

 


フィニッシュ・グラスの200年。


フィンランド国内で最古の歴史を持つ、ガラスメーカーの源流ともなったヌータヤルヴィ社。本書は、同社200周年を記念し、1993年に刊行された社史ともいえる一冊です。オイヴァ・トイッカ1991年の作品「ガラスの彫刻Lasiveistos」が本書の表紙を飾っています。

 

 

ちなみに、ヌータヤルヴィ社のロゴマークはカイ・フランクによるデザイン


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