ARABIAの陶芸家、トイニ・ムオナ

Toini Muona 1904-1987


オーガニック・モダニズム


トイニ・ムオナ(Toini Muona 1904-1987)は、1931年にアラビア製陶所に入所。翌年、所内に創設された「アートデパートメント(美術部門)」の初期メンバーとなり、1940年代50年代を中心に陶芸家として創作に注力しました。

温かくしなやかな作風、自然の造形美を思わせる奥深い表現手法は、「オーガニック・モダニズム」と評されました。本書は、トイニ・ムオナの陶芸作品を年代ごと順を追って紹介しています。大判の書籍で、見開きいっぱいに映し出される作品写真はとても印象的です。



そもそも〝ARABIA〟は、アラビア地区に創業


フィンランドのアラビア製陶所は、スウェーデンの名窯ロルストランド製陶所の子会社として、1873年ヘルシンキのアラビア地区に創業。当初はロシア市場向けの陶磁器や衛生陶器などを生産していました。1916年にロルストランド製陶所から独立すると、その後は、ヨーロッパ最大の規模にまで成長しました。



アート・デパートメント設立


1932年、所内に「アート・デパートメント(美術部門)」が設立されます。この部門では作家が大量生産品の製造に係わることなく、自由な創作の場の提供となりました。

アート・ディレクターには、クルト・エクホルム(kult Eckholm1907-1975)。メンバーには、ビルゲル・カイピアイネン(Birger Kaipiainen1915-1988)、ルート・ブリック(Rut Bryk1916-1999)、キューリッキ・サルメンハーラ(Kyllikki Salmenhaara1912-1999)等、そして本書が紹介するトイニ・ムオナが参加しました。


轆轤を回すトイニ・ムオナ

干し草 Heiniä

彼女の作品に特徴的なのは、1940年代頃からの筒花瓶で、風にゆれるようにたわんで伸び上がるその形を、自身が「干し草(Heiniä)」と呼んでいました。この造形は、その後も引き継がれ様々なスタイルとともに変化していきました。

干し草(Heiniä)

1951年ミラノ・トリエンナーレ金賞


1951年のミラノ・トリエンナーレでは、「干し草」とともに、青味を帯びた釉薬銅紅釉による花瓶が金賞を受賞しました。ふくよかな器面全体に現れる斑文などは、中国陶磁をお手本として様々な燃焼法と釉薬調合の研究の成果によるもの。この技法により、さらに大皿などに表現の場をひろげていきました。

1951年ミラノ・トリエンナーレ金賞作


釉薬により銀河のような模様が描き出された大皿

Toini Muona 1904-1987



書の世界にインスパイアされて


1960年近くになるにつれ、作風はより単純化され、白と黒、金銀など限られた彩色の作品がが登場しました。これらは、日本の書の世界にインスパイアされたものとのことです。






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