投稿

2月, 2022の投稿を表示しています

陶芸の達人 ウィルヘルム・コーゲ

イメージ
Wilhelm Kåge Keramikens mästare 画家・グラフィックデザイナーとしてキャリアをスタートさせた ヴィルヘルム・コーゲ ( Wilhelm Kåge 1889-1960 )は、スウェーデン工芸協会( Svenska Slöjdföreningen )の推薦を受け、グスタフスベリ製陶所へセラミックデザイナーとして入社しました。 1917 年、 28 才でした。 もともとグスタフスベリは 17 世紀中葉、貴族の所領地とその附属煉瓦工場として始まり、経営主体の移行とともに、 1825 年、ドイツの製陶技師を迎え製陶所として新たなスタートを切りました。当初は英国風、銅版プリントもの主体でしたが、やがて、北欧模様による Nordiska Stil の作品群を世に出すなど、国際社会でも高い評価を得るに至りました。 その後、近代工業化の流れとともに、一般市民生活の質的向上に資するような、良質なマス・プロダクトへの要請が高まり、 1910 年以降、スウェーデン工芸協会は有能な若手芸術家・建築家を、分野を超えた産業の世界(特に、ガラス・陶磁器産業)へ積極的に招致し、デザイナーと職工の協働による生産体制構築を図りました。デザイナー、 コーゲも そのひとりとしてグスタフスベリ製陶所に招かれたのでした。 同1917年、 コーゲ は、ストックホルム、リリエヴァルクス・ギャラリー( Liljevalchs Konsthall )で開催された「生活博覧会 Hemutställningen 」に、「 Liljeblå リリエ・ブロア(青いユリ)」サーヴィスを出品。過装飾を廃したフォルムに、コバルト・インクによるシンプルな「ユリ」をアクセントポイントとした、当時としては斬新なデザインでした。 また 1933 年には、機能主義的なテーブルウェア「 PRAKTIKA プラクティカ」シリーズを発表。これら コーゲ の作品群は、既存の装飾的な新古典主義を脱した、北欧モダン・デザインの封切りとなる象徴的なプロダクトだったのです。 一方 1910 年代以降、グスタフスベリ製陶所ではプロダクト製品とともにアート・ポタリーの制作にも重点を置きました。 コーゲ のアート・ポタリーとしては 1930  年に発表した「 ARGENTA (銀)」シリーズがあります。深い緑釉・暗赤釉を掛けた陶胎に、

フィンランドデザイン協会 Ornamo オルナモ

イメージ
The Ornamo Book of Finnish Design   The Ornamo Book of Finnish Design 1911 年 9 月 30 日、フィンランドでは、国家としての独立より 6 年も早くデザイン協会「 Ornamo (オルナモ)」が発足した。本協会は、 “Koristetaiteilijain Liitto (The Society of Decorative Artists)”  の名の下、国内の工芸・デザインの発展、アーティストの相互協力、技術の向上・開発を目的として始動し、現在も活動している。 https://www.ornamo.fi また、それ以前 1875 年には、クラフツ・アンド・デザイン協会( Suomen Taideteollisuusyhdistys- the Finnish Society of Crafts and Design )が設立された経緯があり、当時フィンランドとしての民族意識の高揚とともに、新たな時代へ向けた近代工芸運動・教育・世界的発信の中心的役割を担ったのである。 本書は、デザイン協会「 Ornamo (オルナモ)」創設 50 周年を期に、 1961 年に刊行された作品集である。 1957 年クラフツ・アンド・デザイン協会主催による The Industrial design exhibition (工業デザイン展)がヘルシンキで開催され、同年開催のミラノ・トリエンナーレでは、賞全体の 1/4 をフィンランドデザインが占め、「ミラノの奇蹟」と呼ばれた。フィンランドがデザイン大国として世界的認知を獲得した時期に本書は刊行されたのである。 カラー、モノクロを織り交ぜ 650 ページを超えるボリュームに、家具、プロダクト、カトラリー、テキスタイル、アクセサリーなど 600 点以上の図版と共にフィンランドのアーティスト、デザイナーを紹介する。 編集に Armi Ratia (アルミ・ラティア 1912-1979 )、 Kaj Frank (カイ・フランク 1911-1989 )、 Erik Bruun (エリック・ブルーン 1926- )他。ページレイアウトは Oiva Toikka (オイバ・トイッカ 1931-2019 )という豪華メンバーにより制作された。 ちなみに、「 Ornamo 」とは