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7月, 2022の投稿を表示しています

ドラ・ユングが活躍した フィンランド タンペラ社のダマスク織り

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  Pellavaliina|Tampellan damasti 1859-1977 本書「PELLAVALIINA (リネン・テキスタイル)」は、二人の研究者によってまとめられたタンペラ社リネン・ダマスク織り1859-1977までの文化・デザイン史に関する資料的一冊として2018年に発刊されました。 フィンランド第二の都市タンペレ(Tampere)。街の南北にある2つの湖の水位差を利用した水力発電によって、19世紀から重工業都市として繁栄しました。1856年、亜麻紡績(リネン)工場が開設され、1861年、Tampereen Pellava ja Rauta-teollisuus Oy(タンペレ亜麻紡績・鉄鋼業株式会社)という総合企業が設立。社名「Oy Tampella AB」となったのは1961年頃のこと。 1890年代、大規模なジャカード織機が導入され、リネン・ダマスク織りのテーブルクロスやタオルの生産が拡大されました。当時、フィンランド国内にテキスタイルデザインの専門教育機関はなく、国内外の芸術家を起用して、ダマスク織りのパターンデザインは開発されたといいます。初期にはアールヌーボーの影響を受けた自然モチーフのものが多く、1917年フィンランド独立へ向けた機運の高まりとともに、フィンランド・ナショナリズムがダマスク織りの図案にも現れ始めました。 ダマスク織りの新しい時代を切り開いたのは、なんと言ってもDora Jung(ドラ・ヤング1906〜1980)でした。1929年、中央芸術工芸学校(Taideteollisuuskeskuskoulu/現アアルト大学)に繊維部門が開設されるとともに入学。1932年卒業と同時に、自身のアトリエDora Jung Textilを設立。戦後1951年、54年、57年とミラノトリエンナーレで立て続けにグランプリを受賞し、氏のリネン・ダマスク織りが国際的な注目を集めました。伝統的なダマスク織りを北欧モダンの世界に組み替えていったのです。タンペラ社との協業は1937年から1977年まで続き、タンペラ社の歴史とともにテキスタイルデザイナーとしての人生を歩みました。 本書では、Dora Jungを始めとする作家の作品が美しい写真で掲載されており、また最終章には、タンペラ社リネン・ダマスク織りの歴史120年間に生産された895点がモデル順

スウェーデン、プリントファブリックの世界

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Tryckta tyger för alla tillfällen 本書「TRYCKTA TYGER FÖR ALLA TILLFÄLLEN(あらゆる場面で活きるプリントファブリック)」は、スウェーデンの1940年〜1960年代、テキスタイルデザイン全盛期の作品・製品について体系的にまとめられた一冊です。掲載されている美しいスケッチ画や生地サンプル写真は、主にLjungbergs(ユンバリ社)の貴重なアーカイブと各デザイナー関係者への取材をもとに編纂されました。 スウェーデンは、北欧諸国の中でもっとも早く近代工芸運動が始まった国ということで、テキスタイルデザインについては、家庭内手工芸から工業生産への転換期を経てもなお、伝統が毀損されることなく、新しい時代へ、新しい技法を介して継承発展されてゆきました。本書前段でも簡単に触れられていますが、プリントファブリック前史に登場し、伝統からモダンへと橋渡しをした代表的な女性作家について、こちらでも整理してみたいと思います。 Lilli Zickerman (リリィ・シッカーマン1858-1949) 19世紀後半、工業生産化へによって各地の農民手工芸生産者は困窮を極めました。その状況に応じて、工芸品の生産と販売を支援する手工芸運動も活発化しました。その中心的役割を担ったのが1899年に設立された「Föreningen för Svensk Hemslöjd(スウェーデン手工芸協会)」であり、その推進力となったひとりとしてテキスタイル・アーティストLilli Zickerman がいました。 Lilli Zickermanは、1910年〜1932年にかけてスウェーデン全土を歩き、各地の手工芸によるテキスタイルを調査し、伝統的テキスタイルデザインの目録を完成させました。この内容は1937年出版の「Sveriges Folkliga Textilkonst (Swedish Folk Textile Arts)」にまとめられ、またコレクションは現在「ZICKERMAN COLLECTION」としてKONSTFACK〈University of Arts, Crafts and Design〉に収蔵されています。 https://youtu.be/spxCIyMwLSw Elsa Gullberg (エルサ・グルベリ1886〜1984

北欧スウェーデン クリスマスのヴィンテージファブリック

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Tryckt till jul Tryckt till jul クリスマスのためのプリントファブリック 本書初版は、ボラスのテキスタイル博物館(Borås Textilmuseet)にて開催されたクリスマスのヴィンテージテキスタイル展(Retrojul)に関連し2014年に出版されました。この企画展は2020年までスウェーデン各地を巡り、それに伴い第2版として2020年、増ページ改訂されたのが本書となります。 内容としては、テキスタイルデザイン全盛期の1950年代〜60年代のクリスマスパターン(当時、熱狂的なコレクターアイテムとなった)を多く紹介していますが、それ以前の、デザインの源流ともなった1900年代初頭の図案、クリスマスの家族風景や室内装飾の写真なども掲載され、文化史的文脈からの解説も試みられています。クリスマスの季節だけ特別に飾られるテーブルクロスや壁飾り用のファブリックの世界であっても、北欧スウェーデンのデザインの文化に深く引き込まれる一冊と言えるでしょう。本書後編にはクリスマスパターンを描いた90人以上のデザイナー紹介とプリント製造を担った企業の紹介が続き、貴重なアーカイブ研究書ともなっています。 本書続編として、2019年に「 Tryckta tyger för alla tillfällen (全てのシーンのためのプリントファブリック)」があります。 この商品をオンラインショップで見る >> elama.jp