踊るダマスク織り作家 Den Dansande Damastvävaren
手芸や織物というと女性の領域と考えがちですが、近代スウェーデンには、ダマスク織りの技法とデザインを究めた男性作家がいました。本書は、1920〜40年代を中心に活躍したダマスク織り作家「カール・グスタフ・ヴィドルンド(Carl Gustaf Widlund1887-1968)」の生涯と作品を綴った一冊です。
彼は、タンゴやルンバを踊る気さくでウィットに富んだ紳士である一方、傲慢で不機嫌な職人でもありました。それでも、彼がスウェーデンで最も習熟したダマスク織り作家のひとりであり、伝統的なデザインへの造詣の深さについては、誰もが認めるところでした。
ヨーテボリ(Göteborg)生まれ。早くから織物に興味を持ち、10代〜20代前半にかけて、ストックホルムのヨハンナ・ブランソン織物学校、ボロースのテキスタイル・インスティテュート(ボロース大学)で織物技法を習得。1910年以降、20代にヨーロッパ各地へ遊学。出かけた先は、ドイツのクレーフェルト織物学校、パリ、シルク生産の中心地リヨン、ボルドー、マドリッド、トレド、イタリア各都市、さらに北アフリカに渡りモロッコ、チュニジア、ロシア方面へも足を伸ばしたといいます。
30を過ぎた頃、スウェーデン中西部ヴェルムランド地方(Värmland)に屋敷を構え、農業に従事しつつ織物工房を開設。以降、様々なの作品・製品を世に出し、数々の受賞に輝き、当時スウェーデンのアーティストや企業家との交流を深め、最後まで、日々織物職人として織機の前に座したといいます。
1968年、81歳の生涯を終えると、遺言により彼の所有していたの織機11台、織物道具、書物、広く集められた資料等は北方民族博物館(Nordiska Museet)に寄贈されました。
ダマスク織りは、シルクロードを源流としてヨーロッパに伝わり、やがて各地に広がっていきました。また、スエーデンにはスウェーデンの家内手工芸の文化が蓄積されていて、彼は2つの流れを自身の中に束ね、北欧の次の時代へ手渡して行った、そんな存在だったのではと思います。
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