デンマークのテキスタイルデザイナー



デンマークには、独特のテキスタイル・デザインがあります

デンマークには、フィンランドやスウェーデンとは異なる北欧デザインがあります。それは、デンマークが、ヨーロッパにいちばん近いせいか、世界を股にかける海運大国の伝統のせいか。常に、外の文化を柔軟に許容する懐のひろさがデンマークデザインの特徴ではないかと思いま
す。



ジャワとフランクフルトのテキスタイルデザイン

例えば、テキスタイルデザイナー、マリエ・グルメ・レット(Marie Gudme Leth1895-1997)。デンマーク装飾美術館に勤務する中で出会ったアジアのろうけつ染めに興味を持ち、20台後半ジャワに渡り、現地でバティック技術を習得しました。さらに30才台には、ドイツ、フランクフルトの装飾芸術学校(Kunstgewerbeschule)でテキスタイルプリントの最新技術を習得します。


アジアンでもユーロピアンでもない

彼女の初期の作品は、木版スタンプによるブロック技法で制作された作品が多く、単色か少数の彩色。プレーンな生地にアイコンモチーフが整然と並んだデザインが主流です。 北欧の多くのテキスタイルデザインとは雰囲気が異なり、アジア的ニュアンスが感じられます。



シルクスクリーン技法で洗練されたデザイ

1930 年代後半以降、自らのスタジオを立ち上げ、技法はシルクスクリーン印刷に変わり、リピートされたパターンによる構成が中心となりました。1940 年代までには、デザインと配色がより洗練され、植物や動物のモチーフがあふれていきました。






イタリアと近東の旅でインスパイアされたもの

1950年前後から図案は次第に具象性を脱し、モザイクパターン、幾何学的なデザインに移行します。色調も次第に濃度を深くし、時にはビビッドなデザインの図案も制作されました。これらは古代モザイクのあるイタリア (ラヴェンナ) と近東への旅行が、急進的なスタイルの変化をもたらしたといいます。


Marie Gudme Leth|En pioner i dansk stoftryk

Marie Gudme Leth|En pioner i dansk stoftryk


本書では、マリエ・グルメ・レット(Marie Gudme Leth)のテキスタイルデザインが紙面一杯に構成されており、見応え十分の内容となっています。彼女のデザインは、旅先で出会った当地の生活や文化を深く呼吸することから開花しているようにも思えますし、それ以前に、視線を広くひろげる姿勢に基点があるようにも感じます。作品に漂う独特の印象や観る人に及ぼす既視感や懐かしさのようなものは、「欧」一辺倒ではない多彩なニュアンスに因るところが大きいのではないでしょうか。誰とも似ていない独自性を備えたデンマークのテキスタイルデザイナーです。






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