デンマーク、器の世界 Danske STEL
2010年、デンマークのCLAY陶磁器美術館(CLAY Keramikmuseum Danmark)は、約55,000点に及ぶ歴史的価値のある食器アイテムの寄贈をロイヤル・スカンジナビア・グループから受けました。
このグループの傘下には「ロイヤル・コペンハーゲン」はじめ、デンマークで二番目に古い磁器製作所「ビング・オー・グレンダール(Bing og Grøndahl)」や陶器製作所「アルミニア(Aluminia)」があり、寄贈の品々は18世紀後期から現代に至るまでデンマークのサーヴィスすべてを網羅するものでした。
CLAY陶磁器美術館での企画展
CLAY陶磁器美術館では、これら寄贈の品々の展示整理を行った上、2021年に企画展「Danske STEL -fra blå blomster til grove glasurer(デンマークのサーヴィス -青花から粗い染付まで)」を開催。同時に本書が刊行されました。
歴史的な変遷に沿った20カテゴリー
本書では、様々なデンマークのサーヴィスが、歴史的な変遷に沿って20のカテゴリーで紹介されています。その主な作品群を取り上げますと…
ロイヤル・コペンハーゲン開窯期
1775年、王室後援により「ロイヤル・コペンハーゲン(王立磁器製作所)」が開設され、その第一号のデザインとなったのがブルーフルーテッド。デンマーク語では「Musselmalet(ムースルメイルット:ムール貝)」。当陶磁器制作所を代表するデザインとして今日もなお多くのファンを引きつけてやみません。。
さらに「Blå Blomst(ブロ・ブロムスト : 青花)1779年」、「Flora Danica(フローラ・ダニカ)1790年」、ファニー・ガルデ(Fanny Garde)による「Mågestellet (モウステッル : カモメ)1892年」と続きます。伝統的に洗練され美しく飽きることがなく、多くの人々に愛されているサーヴィス・シリーズとなっています。
Musselmalet(Blue Fluted)1775年 |
Flora Danica(フローラ・ダニカ)1790年 |
Mågestellet (モウステッル : カモメ)1892年 |
ヴィンテージとして、もっとも人気の高い1950年代サーヴィス
1950代以降のものとして、現在もヴィンテージとしてコレクターに人気の高いイェンス.H.クイストゴー(Jens.H.Quistgaard)の「Relief 1958年」、彫金作家アージー・グリース(Arje Griegst)による「Konkylie(コンキュリェ:巻き貝)1976年」など。
「Konkylie」は、製造上の難易度が高く短期間で廃盤となり、今や〝幻のサーヴィス〟として珍重されています。
Relief 1958年 |
Konkylie(コンキュリェ:巻き貝)1976年 |
近年のサーヴィスとしては、コペンハーゲンの三つ星「ゲラニウム(Geranium)」など数々のレストランで採用されている作家グーリ・エルベックゴー(Gurli Elbækgaard)の器「Brugsting(ブロースティン : 便利なアイテム)2000年」。モダンでざらっとしたテクスチュア、オーガニックな風合いが人気です。
また2000年、ロイヤル・コペンハーゲン225周年の試作として、古典的初期デザインMusselmaletを新しい視点で再構築した「Blå Mega Riflet」があります。1974年生まれの若手デザイナーKaren Kjældgård-Larsenによるもので、テスト的にショーウィンドーに陳列した6枚のランチプレートは爆発的な人気となりました。
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Brugsting(ブロースティン : 便利なアイテム)2000年 |
Blå Mega Riflet 2000年 |